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穀物は、フードピラミッドシステムの底辺に位置する基礎食品ですが、あまり注目されていません。シェフであるダン・バーバーやエンリケ・オルベラはそれぞれ、小麦やトウモロコシの品質について語ることがよくありますが、普通の人々は、白米と玄米の違いは分かっても、品質の違いまではわかりません。中村桃子さんは、それを変えようと活躍しています。東京に在住し、2017年末に自ら厳選したお米を二十四節気に合わせて家庭に届けるKiki Musubiというお米の宅配サービスを始めました。日本は瑞穂の国だからこそ、先ずはお米の美味しさを知ってもらいたいという強い気持ちから、お米に対する意識改善に努めています。
私は中村さんを紹介され、すぐに親しくなりました。情熱的な語り手であり、フードに関しては多才で博学な彼女は、料理の鉄人のアメリカ版、Masterchef、Food Network等のフード番組のプロデューサーを務めた経験を持つと同時に、日本の伝統的な食文化やマクロバイオテックの勉強も重ねてきました。しかし、日本の地元生産者や起業家と仕事をする機会を得るうちに、自らが伝統的な調理方法を実践し質の高い食材を使うことが、もっと大きな影響を及ぼすことに気づいたのです。その結果Kiki Musubiと彼女のもう一つの顔、食のコンサルティングを提供するThe Momo Co.は、日本の農家及び農産物と世界を結ぶ原動力になりました。お米のサブスクリプションサービスKiki Musubiそして、プライベートディナーシリーズや片田舎への旅等のイベント企画を通じて、中村さんは、私たちのお米に対する考え方を、一粒一粒、変革しようとしているのです。
私たちは、中村さん、別名Rice Girlから、どのようにライスマイスターになったか、二十四節気のコンセプト、地道な努力を要する消費者教育についてお話を伺うことができました。
日本にお米のソムリエは他にもいますか?
私はお米に強い熱意と愛着を抱いているだけで、私はお米の「ソムリエ」だと決して思っていません。Rice Girlと呼ばれる方が心地よいのです。私は、お米を食べ、お米の話をし、お米の夢を見ます。そして、いつもお米のことを考えています。私が記憶している限り、幼い頃の思い出は、お米にまつわることばかりです。そして、最後の晩餐は、絶対にお茶碗一杯のご飯なのです。私にとって、お米とは、お水と同じくらい重要で、なくてはならいない存在なのです。だから、私は、「ソムリエ」ではなくむしろ、ブルジョワ、プロレタリアに関わらず誰にでも親しまれるRice Girlなのです。
お米を作る農家の方々、お米の問屋さん、昔ながらのお米屋さんのオーナー、デパートのお米のバイヤー等、お米の専門家が日本中にいます。お米のマイスター或いはお米のソムリエの資格認定教育を提供する団体も存在します。日本では、ニッチな分野の専門資格を取得することは、とても人気があります。
お米を配達するということは、どこから生まれた発想ですか?日本には、似たようなサービスは存在しますか?
ロンドンのジャパンセンターでは、お米のサブスクリプション配達サービスがあるようですが、私の理解では、既存の大手製品から選ばれたお米を提供しているようで、食品に限らずあらゆる商品を対象にしたワールドワイドのサービスです。日本では、生協
やお米を含む農作物の直売宅配サービスが数多く存在します。お米は、ネットで購入できますし、多くのスーパーは、お米も含む食料品の配達サービスを行っています。
しかし、このようにお米が手軽に入手できるにも関わらず多くの人はお米に対してそれほどこだわりをお持ちでないようない気がします。もしかして、お米が手軽に入手できるからこそ無頓着になり、無意識になる原因になっているのかもしれません。
お米の生産は、どの大規模農業にも言えることですが、恐ろしく大量の肥料と農薬を使用しています。そして、食品ではなく商品として取り扱われています。私たちが家庭で食べる穀物は自然なものでもありつつケミカルでもあります。第二次世界大戦中は、飢えの問題が発生した地域もありましたが、勿論現在はそのような問題はありません。人工的な化学薬品と技術のお陰で、お米が大量に生産されるようになったからです。
今の日本では良いお米を手に入れるのは当たり前のことです。だからと言って、世界の人々や日本人でさえも、日本のお米の多種多様性を知っているとは限りません。お米は南米のスーパーフードと比べ、それほど魅力のある食品ではないのかしら。これからですね。
私が以前関わっていた食関連のメディア業界では、視聴者数が数百万に達しなければ価値がないと見なされました。私、Rice Girlとしては、日本の伝統的で自然な方法でお米を育て、愛情と手間暇かけ熱意を持ってお米を育てている農家の方々とつながりを持つことに興味を持っています。このように労力を払った結果はじめて優れたお米ができるのです。一つ一つの品種に独特な味わいと歯ごたえと用途があり、量より質であることの真の証です。
食業界のコンサルタントとして、日本でお米の品質・品種に対する関心や注目が変化してきたと思いますか?
お米に対する関心は確かに変化していますし、食べ物が本当にどこから来るのかに深い関心を持っています。私たちは、電子レンジ、洗濯機、炊飯器で育った世代です。私たちは、より「早く」「安く」「大量に」の中で育って来ました。私は、これら全てに批判的でした。しかし、それは戦後の貧しい生活の中で生まれた革新だったと気づいたのです。そして、その代償として優雅な生活がおくれる社会で育ってきました。しかし、日本や世界の国々の多くの人達は、その反動が少々行きすぎた状況を生んだと気づいたのです。そして今やっとUターンし始めた気がします。私達は、祖父母の時代の手仕事や手工芸の持つ人間らしさを求めているのではないかと思います。だからこそ、一粒のお米に注意を払うことに価値観を見いだしています。
二十四節気を主題にしていますが、そのコンセプトについて説明してください。季節は4つしかないと思っていたのですが。
私たちは、春夏秋冬は知っています。どの人も納得いく一般的な季節の分類です。ただし、3ヶ月の春が終わるとすぐ夏が始まるわけではないとなんとなくわかりますよね。季節は日々徐々に変化しています。日本では古くから、大きく分けられた四季を更に24の小季節に分け、また更に細かく72のマイクロシーズンに分けています。つまり、5日ごとの季節の変化を認識しているということです。このコンセプトは、日本の文化のほとんどがそうであるように、もともと古代中国から伝わったものですが、日本の気候、文化、草花、生き物を反映して進化してきました。暦は、詩歌のように一年間の物語を語ります。農家、醸造家、陶芸家、花屋、料理人、これら全ての職人たちが、この物語に耳を傾けて仕事をしているわけです。
Kiki Musubiは、この二十四節気を基本にしています。
お米はどこから仕入れていますか?
私は、日本の田園風景を旅し、自然栽培でお米を育てている農家の方々と直接お会いしに行かせていただいています。彼らは、標準的な農法を使わず、土壌、水、気候、環境、周囲の自然を見極めながらお米を育てています。もちろん肥料や農薬は一切使いません。自然と常に語り合いながら愛情を持ってお米と向き合っています。多分特殊な農法には欠かせないからでしょうか、彼らは、ちょっと変わり者でチャーミングで素晴らしい人達が多く、まさに次世代のため地球を住みよい場所にするために日々努力しています。
マイクロシーズンに適した品種はどのように決めるのですか?過去に配達したお米を例にとって説明してください。
お米は、非常に複雑で奥深いものですが、初歩的な教育段階では、できるだけ簡単に説明するよう努めています。私は、単純に2つ軸のグラフを使い、しっとり、もっちり、あっさり、しっかりと品種を4つに分類しています。
12月7日〜21日にあたる「大雪」の季節には、もっちりとしっかりした傾向の品種を3種選びました。陽が最も短い時期なので、一般的に濃いお食事を好みます。ですからよく噛んで食べるもっちりとしっかりしたアルデンテなお米が、濃いめに味付けした食べ物とうまく調和します。
将来的には、レーダーチャート、ツリー図、サンバーストチャート等の複雑なグラフを使って分類を考えていますが、今のところは、シンプルな方法で分類をしています。
米好きですか?二十四節気を楽しむ厳選された日本のお米をKiki Musubiはこちらからご注文ください。
和訳: 中村 洋子